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ストリートファイターIV: 遠藤正之 & 深澤秀行

April 3rd, 2009 Posted in ゲーム

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GameSetWatch インタビュー

通常、ゲーム音楽のサントラに複数の作曲家が参加するような場合それぞれの音楽家が各々のアプローチをとることで作業が個人単位になるという傾向がある。しかしながら、この度発売となったおなじみの「ストリートファイターIV」のサントラ制作では、サウンドディレクターの遠藤正之氏と作曲家の深澤秀行氏がコンビさながらのチームワークを発揮し、一枚のアルバムを完成させた。今作では各ステージの国際色を忠実に反映するために民族楽器や、その地方独特の「音」を積極的に取り入れているのも制作者の意図を示す重要なポイント。

さらに、今となっては馴染みの深い過去シリーズからの楽曲を「現代のストリートファイター」色に塗り替えるという大仕事を見事こなしたお二人。ゲーム中では音楽の演出の仕方も工夫が見られ、バトルをはじめとしてその他のムービーの音楽も絶妙なタイミングでより一層の臨場感が楽しめる仕上がりだ。このインタビューでは株式会社カプコンの大作「ストリートファイター」シリーズを振り返るとともに、今回の「ストリートファイターIV」サウンドトラック制作のお二人のコラボの様子をお話しいただいた。

取材:ジェリアスカ

翻訳:佐藤領二郎
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Music Composer Hideyuki Fukasawa & Sound Designer Masayuki Endou

GameSetWatch: 遠藤さん、深沢さん、今回はインタビューへのご協力ありがとうございます。今回は新作の「ストリートファイターIV」についてお伺いしたいと思いますが、よろしくお願い致します。

遠藤正之: ストリートファイターIVでサウンドディレクション、サウンドデザイン等を担当させて頂きました遠藤正之と申します。

深澤秀行: 作編曲、プログラミング等を担当させてい頂きました深澤秀行と申します。

遠藤深澤: よろしくお願い致します!

GSW: ストリートファイターIVのお仕事に取りかかったのはいつ頃でしたか?

遠藤: ストリートファイターⅣのプロジェクト自体は3年も4年も前から動き出していたと思いますが、サウンド制作に取り掛かったのはちょうど二年前位ですかね?

深澤: そうですねちょうど2年くらい前に小野プロデユーサーからお話を頂きまして、実質の作業がスタートになりました。

GSW: 当初からはどんなコンセプトで開発が始まりましたか?また前作から、どう変えて行くというような思索はありましたか?

遠藤: コンセプトですが、“原点回帰”がSFⅣの命題ではありますがリメイクするのではなくあくまで新作であり現代の表現でストリートファイターを復活させるといった所でしょうか。ストリートファイターの場合、バイオハザードの様なよりリアルな音、空間を作りあげる事で体感するエンターテインメントではなく、記号的な音(HIT音等)や記号的なメロディと、現実音(foley等のリアル音)のバランスを保ちながら懐かしいけど新しい爽快感を表現出来ればと考えておりました。

深澤: 僕の場合はまず、自分がゲーム中に流れて欲しい音楽を作ることを目標にしていました。しかし過去のメロディやアレンジにも気を配りました。それらを現代的に焼き直すと同時に、キャラクターやステージにドラマを生み出せたら良いな、というゴールも設定していました。

**Past Collaborations and Preparation**

GSW: 今回のサントラを作る上でプロダクション全般で一番大切だった目標、また方向性はどのようなものですか?

遠藤: 楽曲、効果音共に言える事ですがユーザーの気持ちにより多くの感動を与えるには
どの様な演出が必要なのか?どの様な楽曲をどの場面で再生すべきなのか?このディレクションで全てが決まると思います。深澤さんに素敵な楽曲を作ってもらい最高の素材が用意出来ても再生するポイントを間違うと楽曲のポテンシャルを引き出す事はできませんので、、

深澤: 遠藤氏のディレクションは重要でした。僕は音楽に集中しすぎてプレイヤーの
観点を見失いがちでしたので。一番大切にしていたことは、オリジナルのテーマなどを汚してファンの血祭りに上げられないように(笑)。方向性は結果論ですが、ストリートファイターの音楽を現代版に焼き直してこれからの10年のスタンダードにしたかった。

GSW: 以前お二人がご一緒にされたお仕事についてお話しください。

遠藤: 深澤さんとは今までにカオスレギオン、新鬼武者、モンスターハンターフロンティアといったタイトルを一緒に制作しております。私が担当するタイトルは深澤さんと必ずと言って良いほどセットなのでユーザーからのメール等でコンビと思われているみたいです(笑)。 何作品も一緒させて頂いているので呼吸もあっているとでは?と思います。

今回はプラットフォームが次世代機でもありましたので楽曲はサラウンド再生の箇所が多くを占めます。私がディレクションし、深澤さんが楽曲を制作した後に私がサラウンド5.1chMIXを行うといった形式で最後まで行きます。深澤さんのセッションは5.1chMIXを意識したBUSへの送り方等をしてくれるのでMIXはやりやすいですし、興奮の連続でしたね!

深澤: 遠藤氏とは青春を共に過ごしたような同時体験や原風景の共有があるんです。誰も知らないレーベルのプロモ12インチを二人とも持ってたり。だから言葉や会話が他の人より意味を持って成立するんです。共同作業なのでとても大切なことです。

GSW: ゲーム中では多岐にわたるジャンルの音楽が印象的ですが、それぞれのスタイルをうまく表現するのにどのような工夫や研究がありましたか?調べものや色んな音楽を聴きましたか?

深澤: ロシアのステージ楽曲を作る際にはロシア民謡をたくさん聴きました。そのときロシアのヒットチャートも聴きまくったんですが、バックトラックがハウス/テクノ系でメロディがまさにロシア民謡な楽曲が結構多くて驚きました。研究や調べものという意味では、過去のストリートファイター・シリーズの音楽を多く聴きました。iPodの中がもう格闘技の音楽でいっぱいでしたし、改めてメロディの強さやアレンジの絶妙さを認識しました。

**Personal Perspectives on the Characters**

GSW: 特にユーザーの方々に聴いてほしいと思うポイントはありますか?またご自身ではお気に入りの曲は?そしてもっともキャラクターの個性を表現している、もしくはシーンにマッチしている曲はどの曲だと思いますか?

遠藤: サウンドディレクターとしてはやはり各キャラクターにある因縁対決戦ですね。セリフも専用のボイスが再生されますし、因縁戦専用のキャラ曲が再生されま す。その中でも、サガットをプレイした時のvs.リュウ戦で、リュウの表情に力が入るタイミングでリュウの曲が再生されます。制作者がいうのもなんですが 最高にかっこいいです。ゴウキをプレイした時のvs.リュウ戦ではドラマチック寄りに設定し壮大な雰囲気の中で戦うという演出を致しました。こちらも是非 体感して頂きたいポイントですね。

GSW: 何名かのキャラクターは今回初めての登場となります。曲作りに影響した設定上の各キャラクターの個性を教えてください。またストリートファイターの世界にキャラたちを馴染ませるのにどのような工夫がありましたか?

遠藤: ストリートファイターのキャラ曲に関しましては、一定のルールがあると考えています。それは“曲の象徴が存在する楽曲”だと思います。それは別にメロディ等の主旋律でなくても、フックとなるモチーフでも良いと思います。ユーザーの印象に残る楽曲を制作するというのは、ストⅡでもストⅣでも共通している事だと思います。

C.Viper=スピード感、Abel=哀愁のあるメロ&力強さ
El Fuerte=情熱的なキャッチーさ、Rufus=バイク乗り&陽気さ
Seth=絶望感と混沌感、Gouken=ゴウキモチーフ&対峙するメロ

が、楽曲に対する各キャラクターの個性になります。

深澤: C.Viperは新キャラとしてのフレッシュさを出したかったのでスピード感を第一に母としての自分と組織の一員としての葛藤…これだけドラマの材料があれば充分に曲が作れます。他のキャラクターも特に馴染ませるために意識して工夫したりはしていません。逆に違和感があるくらい今までに無い曲を与えた実感すらあります。とくにEl Fuerteなんて…僕のお気に入りですが…今までには無い曲調ですよね。

Street Fighter IV Original Soundtrack
Tracklist
 
GSW: 作曲をする際に、曲がゲーム中の効果音とぶつからないように配慮するという事は大変重要だと聞きますが、自由に音楽を作りたい側としてその事に細心の注意を払うのはまた一苦労だと思いますが、今回の制作ではこのようなとても苦労したような場面はありましたか?

遠藤: この点に関しましては、格闘ゲームの場合意識しすぎてしまうと楽曲として崩壊する恐れがあります。それは、SFⅣの場合ですが何処でなんのボイスや効果音が再生されるかの予想はつきません。予想がつかないというよりかは何処を切り取ってもSFⅣでないといけないという点が一番苦労しましたね。深澤さんには楽曲制作時にはあまり気にしないで頂いて楽曲としてベストなものをお願いしています。

その後私のMIXでEQ処理等を行いましてボイス、SEとあまりかぶらない様に周波数帯域を調整し、ボリュームコントロールでインタラクティブに動かし曲と効果音それぞれの魅せ場を作る様に心がけました。ドラマ部分やアニメーション部分に関しては、深澤さんとここは曲と効果音どちらを引き立てましょうか?等の打ち合わせを行ったりしますが、ほとんどの場合、何も言わずともお互いが自然の意識の中でお互いをたてる構成で音を作りますね。

深澤: 実際にプレイするステージ曲などは、「楽曲アレンジの構造がなるべくシンプル」
ということ以外はあまり意識していません。ドラマ部分やアニメーション部分ではセリフやSEの存在に気を使って作曲します。そういった制約や条件が足かせに感じたことはありません。逆にそれらを活かせるように音楽が存在出来れば最高だと思っています。

GSW: ゲーム中の音楽の楽器編成も多種多様です。例えば、”Overpass Stage,” のディストーションのかかった声や”Historic Distillery,”のバグパイプを始め、”Snowy Rail Yard”では弦楽器のアンサンブルが現れます。楽器編成を決めていったプロセスをお話しください。またそれが曲の主旨にあうという確信は始めからありましたか?

深澤: まずそのステージの地域性から楽器編成をイメージします。例えば“Historic Distillery”はScotlandという設定でしたので、バグパイプをイメージした訳です。一見、格闘ゲームとバグパイプは大失敗の可能性さえ感じさせますが、いわゆるバグパイプという楽器自体から連想されるようなメロディを演奏させる訳ではないので、「大丈夫だ、僕は間違ってない」と自分に言い聞かせて前に進むしか無いのです。このように、毎回ステージごとに楽器編成という意味ではチャレンジの連続です。遠藤氏からのアドバイスを頂きながら「このリズムのグルーブに、このメロディをこの楽器で!ああなんて恐ろしい!」と呟きながら制作の挑戦をするのは非常に刺激に満ちています。

GSW: ブラジルと中国、ベトナムのステージには同じメロディで曲が二つずつ用意されています。この各曲で工夫されたアレンジの特徴をお話しください。

深澤: 3曲ともに、アーケードではなく家庭用で追加になったアレンジステージになります。アーケードで聴き慣れた曲ですので、家庭用ではより緊張・緊迫感が高めの曲を用意しようと考え、アレンジ違いを用意しました。ブラジル・ステージは基本がジャングルという設定なので、民族音楽的というか打楽器が多めに配置してあります。”Pitch-black Jungle Stage”がブラジルの夜ステージですが、ジャングルの場合昼間より夜に危険度が増すと思いますので”Inland Jungle Stage”よりも感情的に激しく、各楽器の音色も攻撃的です。

GSW: 深澤さん、音楽とアートデザインのフィールドでのお仕事経験のお話をお聞かせください。また今回のストリートファイターIVのプロジェクトではそれがどこに顕著に表れていると思いますか?

深澤: 映像に音楽を付けることが何よりも好きなことなので、普段からたくさんの映像作品に触れるように心がけています。劇場での映画体験の50%は音楽だ、と言った映画監督がいますが、これは言い過ぎではなくまさにその通りだと思います。音楽で映像の意味付けをする。映像に対して自分の解釈を音にして貼付ける様な感覚です。とても興奮します。今回のストリートファイターIVの音楽も、ステージの動画やキャラクターのデザインなどを常に意識して作りました。サウンドトラックを楽しんでいただければ本当に嬉しいです。

**History of the Series**

GSW: 20年以上も歴史のあるシリーズの最新作という事で、ゲームデザインの視点からは懐かしさを出す工夫のようなものは見られますか?例えば今回は「ストII」からの曲も起用されています。

遠藤: 懐かしさを出すという事だけいってしまうならば世界中の共通メロディなので「ストリートファイターII」のメロディを使えば出るのかと思います。それを、今回のSFⅣの楽曲世界観の雰囲気に合わせつつ取り込むことが出来るか?深澤さんは見事に答えを出してくれました。

深澤: ストIIの頃の曲は各曲、メロディが強いのでどんなアレンジをしても大丈夫だ、と安心してアレンジ出来ました。メロディとコードやベース音とのハーモニーの変更を躊躇させるような強烈な曲が多いので苦労しました。

GSW: 「ストリートファイターⅡ 」からの音楽をアレンジをした際は同タイトルのアレンジアルバムはご存知でしたか?例えば有名どころではストリートファイターⅡ アルフライラ with 鳥山雄司、 ストリートファイター トリビュートアルバム、そして OC ReMix ・スーパーストリートファイターIIX HD Remix サウンドトラックがあります。お聴きになりましたか?

遠藤: もちろん聴きましたし、研究もしました。それぞれアレンジ色を強くだしたもの、原曲を忠実に再現しているもの歴史のある作品ですので他にもいろいろありました。どの楽曲も非常にストリートファイターに対し愛情をもってないと出来ない楽曲ばかりで本当にこのタイトルの偉大さを再確認しました。

深澤: 僕も聴きました。もうこんなにクールなアレンジが大量にあるのに、僕はやることが無いよ、とも思いました。

GSW: 今日のオーディオ機器の性能はとにかく良くなっていますが、スーパーファミコンの頃の制限の厳しい中で作られた音楽を現代の求められる質の音楽に作り替える上での作業のプロセスどうでしたか?古い素材を使うという観点から機材やソフトを使う上で苦労した点などをお話しください。

深澤: 特別な秘密兵器があるんです。それは..遠藤さんがオリジナルのStandard Midi Fileを持っていて送ってくれるんです。初めて送ってもらった時は「これで作業が簡単になる!」と思ったんですが、意外と単純なデータだったので参考にはしたんですが、結局midiキーボードで全てプレイし直した。機材やソフトに頼らないで自分の肉体にムチを打つべき典型的な例だと思います。

GSW: スタッフロールの曲制作のプロセスをお話しください。ここにメドレーを取り入れたのはなぜでしょうか?

遠藤: スタッフロールにメドレーを持ってきたのには当然理由があります。ストリートファイターの場合、RPGゲームとは違い比較的短い時間でスタッフロールまでたどり着く事ができます。その場合、じゃあ次は何のキャラクターでプレイしようかな~?とユーザーの皆は考えると思います。その時に懐かしい曲や新しいキャラ曲が次から次へと再生される事で仮に「この曲ガイルの曲だ!」といった思い出を呼び起こして頂いて「じゃあ次はガイルで遊んでみよう!」等のワクワクした気持ちで一度クリアしてもすぐプレイを始めて何回でも何度でも楽しんで頂きたいというのが主な理由です。それとは別に各キャラクターの曲を次から次へと聴いてもらい懐かしい思い出や、SFⅣの新しい思い出を再確認して頂いてSFⅣが心に残る様な曲というよりは心に残るゲームになったか?ユーザーの皆様に問いかけたいという思いで、あの様なメドレーにさせて頂きました。

GSW: 最後になりますがオーディオデザインの点から、例えば実際には注意して聴かないと聴き流してしまうような、しかしそれでも個人的にはこだわって気に入っているという部分があればお話しください。

遠藤: はやり目玉は因縁対決戦の演出にあると思っています。昔からあるストリートファイターのライバルの戦いがSFⅣでドラマチックに再現しながらバトルが出来るという点が一番の拘りになります。それとは別に2D軸のゲームを何処までサラウンド5.1chで表現できるか?ですね。

ストリートファイターの場合全て画面上(正面)での表現になります。それを違和感なく次世代感、音の立体感を出す表現に苦労しました。スパコンフィニッシュ、ウルトラコンボフィニッシュ時に再生される効果音のリアスピーカーへの流れ方、ナレーションのハードセンタープレイヤーのファンタムセンターの使い方、非常にマニアックではありますが5.1ch環境でしか味わえない特別なサウンド空間も用意しておりますので是非試して頂きたいと思います。

深澤: ステージ各国でのアレンジに、基本的にはその国の楽器が使われています。それ以外にも、DAWで扱われるオーディオ・サンプルひとつでも拘っています。誰が何処で演奏した音なのか、そこまでこだわってひとつひとつ作っています。例えば、ルーファスのテーマのドラマーはアメリカ人でアメリカ製のドラムセットを使っています。ベースを鳴らしたアンプもアメリカ製です。他にも例えばヴァイパーのテーマの歌詞は非常に悲しいことを歌っています。などなど、ひとつひとつこだわり抜いた音の結晶なので、楽しんでいただけると幸せです。これからもよろしくお願いします。

GSW: ありがとうございます。お疲れさまでした。

遠藤深澤: ありがとうございました!

[Images courtesy of Capcom. Street Fighter IV Original Soundtrack can be imported from Amazon.co.jp.(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2008,2009 ALL RIGHTS RESERVED.]

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