「ピアコン」ドッグイヤーレコーズ・インタビュー
March 8th, 2010 Posted in ゲーム80年代の懐かしのビデオゲームのテーマ曲をピアノアレンジしたアルバム「ピアコンI」が現在発売中だ。「Piano X Computer Game」を意味するこのアルバムは、ドッグイヤー・レコーズの小川洋輝氏がディレクターとして総指揮をとり、江草啓太氏がアレンジと演奏を担当した。
「ピアコンI」は、「ファイナルファンタジーXIV」の楽曲を製作した植松伸夫氏率いるレコード会社から今後発売されるシリーズの第一弾であり、「ファイナルファンタジーII」、「マッピー」、「エレベーターアクション」や「MOTHER」からの個々の楽曲をピアノソロのアレンジで収録している。このアルバム製作について、また近くに発売予定のオリジナルコレクション「植松伸夫の10ショート・ストーリーズ」について小川氏と江草氏からお話を聞く。
またこのインタビューでは、「ファイナルファンタジーXIV」オリジナルサウンドトラックとアニメシリーズの「グインサーガ」(共に植松氏が作曲)におけるドッグイヤー・レコーズの関わりや、また「CELLYTHM」のアルバムに収録されている「ファイナルファンタジー」のオーケストラバージョン、「ディスタントワールズ」のコンサートシリーズについてのお話も聞く。

小川さんはドッグイヤーレコーズでどのようなお仕事をなさっているんですか?
小川洋輝氏: 僕はですね、簡単に言うと、植松氏と松下氏がしない仕事、何ですけれど。(笑)ディレクターとして、CDの製作ですとかゲームの音楽の製作のときに、製作の管理をしたり、またCDでプロデュース的なこともやったり、というものが主な仕事です。
最近プロデュースしたCDではどのようなものがございますか?
最近プロデュースは割りと植松氏にやってもらうことが多いんですけれど、ディレクターとしては、他社から出たCDですけれど「グイン・サーガ」で音楽のディレクターとしてやったり、あと「チェリズム」でもディレクターとして関わりました。
ディレクターというのは、例えばどのような感じで関わっている仕事なのでしょうか?
例えば、企画段階からどういうコンセプトでどういう形で仕上げていくかということ、そしてもちろん、どれだけ売ったら成り立つか、どれだけ売ったらどういうレコーディングができるのかというところから、また録音とスケジュールの管理。あとは発売するころになったら、例えばキャッチコピーを作ったりとか、そういうオビのデザインについてどういうコンセプトを持ってやるっていうようなところ。まあ、作る段階、ゼロの段階から、世に出すまでの全般の管理というか、方向性を定めていくという仕事です。
8月2日に行われました、ファミ通Presents PRESS STARTという、ゲームのコンセプトがございましたよね。私も参加して見ていたのですが、小川さんもその時いらっしゃっていたのですか?
あれは植松氏が主催者・企画者として入っているので、うちのスタッフが楽屋で一緒に付いていたりしていたんですけれど、僕は外で物販してまして。ドッグイヤーのグッズを一生懸命売ってました(笑)。
アンコールで「ザナルカンドにて」を江草氏が演奏されましたが、ごらんになりましたか?

はい。うちは江草氏のCDのリリースをしていたという事実はあったんですけれど、僕らが江草氏をオーケストラの中に入れたわけではないので、江草氏がPRESS STARTでピアノを弾くということがすごく驚きでしたし、またその中で「ザナルカンドにて」という、植松氏の曲を江草氏がこういうコンサートで弾くっていうのは僕も知らなかったので、その時だけは物販を他のスタッフに任せて、走って聴きにいきました。すごい感動的でしたね。音も、いい会場なので、すごく響いて。すごいよかったです。
PRESS STARTで「ザナルカンドにて」が流れたときに植松氏がとても感動していらっしゃって涙を流されたということをステージ上で言われてましたね。
ええ。僕じゃないスタッフが植松氏についていたので、それは(直接は)聞いていなかったんですけれど、そのコンサートで別の曲でも泣いていたと聞きましたし。やっぱり「ディスタントワールド」に行く時も、毎回何回行って何回同じプログラムを聴いても、僕もそうですけど、お客さんの反応も含めて聴くと、もうねえ、泣きそうになるんですよ、本当に。エアリスのテーマなんて流れた日には、もう。(笑)お客さんの暖かい反応もありますしね。わかる気がします、泣いたのも。
「ディスタントワールズ」というライブが全世界でございましたが、それについてお伺いしたいと思います。「ディスタントワールズ」のコンセプトというのはどのようなものなんでしょうか?
まず「ディタントワールズ」というのはファイナルファンタジーの海外でのコンサートとして唯一ライセンスを受けた、指揮者アーニー・ロスさんの会社 の方が主催しているものです。何年間で何ヶ所というようなものがあるんですけど、世界中でファイナルファンタジーのコンサートをやっていくというコンセプ トでやっています。やっぱり、植松氏も作曲の仕事があるので、全部に参加しているのではなく、できる限り参加していて、その中でたぶん今は、さっき数えた ところ、7カ国ぐらいのコンサートにはここ2年ぐらいで出席をしています。
小川氏も参加していらっしゃるのですか?

ええ。僕も付き添いでいっております。植松氏自身、英語を聞いて話せる人であるんですけれど、そこで完璧ではないですが、向こうのスタッフの方との段取りの確認ですとか、インタビューのセッティングというか、コミュニケーションを事前に取っておくとか。主に植松氏のフォロー、まあマネージャーとして行っているような感じですね、その時は。
曲はどのような曲を?
お馴染みの「Liberi Fatali」から「Don’t Be Afraid」みたいな曲とか、「The Man with the Machine Gun」とか「片翼の天使」「Fisherman’s Horizon」とか、皆さんが聞きたいような王道の選曲が多いですね。
名曲揃いですね。
名曲揃いです!(笑)やっぱり「ディタントワールズ」の良さっていうのは、映像で常にファイナルファンタジーのシーンが流れながら、音楽を聴くところなんですね。そういう、映像で見せるエンターテイメントの部分と、オーケストラをしっかり聴かせるという音楽的な部分を両立させているという点では、ファンの満足度も高いんじゃないかと思っています。
いろいろな普段行かないような国の、ファイナルファンタジーのファンの方々と触れ合う機会があると思いますが、なにか印象に残ったこととかございますか?
植松氏が出席した公演というのは、だいたい、まあ簡単に言うとサイン会というんでしょうか。「Meet-and –Greet」という、サインをして話をしてというものがあって。まあもちろん全員とではないですけれど。何千人というのではなくて、100人から150 人を相手にしてライブコンサートが終わったあとにやるんですね。そういうところでファンの人と植松氏との交流があります。なかなか会えないですか らね、海外のファンとは。ですからそういうところでコミュニケーションを取ったり。僕自身もファンの人が今、どうドッグイヤーレコーズを認知してるかというのも気 になりますし。まあ、あまり知られてないという現状もあるんですが。そういうところでドッグイヤーレコーズの話をしたり。あと、ファンが何を求めているのかとか、どういうところに喜んでるのかな、というのを話す機会はありますね。
ファンとの架け橋みたいな役割をなさっているんですね。
架け橋!そうなりたいですね。

Dog Ear Records Video Interview I
江草氏、今回はインタビューさせていただきありがとうございます。 カライジュラルがドッグイヤーレコードから発売されましたが、こちらの理解によると、小川氏はこのアルバムの出版についてとてもサポートされていたようですが、この曲のリリースにいたるまでのエピソードやドッグイヤーレコーズ
江草 啓太氏: 長くなりますが、 タイトル曲の「カライジュラル」の元々のアイデアは、大学時代にバルトークの「ミクロコスモス」を聞いたことに遡ります。「この曲はまるでゲーム音楽のようだ。」と感じました。そして、その曲集はバルトークの生まれたハンガリーの民謡をモチーフに彼が作り上げたと聞き、いつか自分もどこかの民謡を自分なりにアレンジしてみたいと思っていました。
2000年ころ、トルコ、アラブ音楽を演奏するバンドに在籍してた時に、トルコ民謡である「カライジュラル」に出会いました。最初はトルコ音楽のスタンダードな形で演奏していましたが、ある時「ミクロコスモス」のことを思い出し、そのバンドの為に僕がリアレンジしました。リリースされたものは、このアレンジが元になっています。
この民謡は、トルコでは結婚式で演奏されることもある御目出度い曲です。ドッグイヤーのスタッフである小川氏の結婚パーティーでこれを弾いたところ、彼がとても気に入ってくれました。植松氏にその時の録音を聞いてもらったところから、リリースの話しが持ち上がった、という訳です。
そして、リリースの段階になってもう二曲必要になり、当時気に入っていたモロッコ民謡の「アイシャ」をアレンジしたところ、小川氏もすぐ気に入ってくれました。他にわかりやすいカバー曲を、ということで、色々な候補の中、YMOの「シムーン」を選曲しました。作業過程は非常にスムースに進みました。
先日、プレススタートでピアノの演奏をされましたが、我がサイトにてもそのイベントをとりあげまして、何人かの参加者の方のインタビューものせましたので、大体何が行われた等は読者も理解しているとは思いますが、江草氏にとって有名なゲーム音楽を「東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団」と演奏したことなど、どのような経験だったか教えて頂けますか?
非常にエキサイティングな経験でした。多くのユーザーに親しまれている素晴らしい楽曲たちが、複数のアレンジャーにより腕を競って編曲されていました。選曲や構成も、非常にファンサービスにあふれてましたし。コンピューターで作られた音楽をあえて生演奏で、しかもフルオーケストラで、というコンセプトも、ユーモアに溢れていて楽しかったです。ゲームを知る人はもちろん、知らない人でも充分に楽しめる、音楽性の高いコンサートだったと思います。
あなたのお父様はPSPのゲーム、アナタヲユルサナイにおいてとても重要な人物だったと聞いていますが、お2人とも同じような、ゲームへの想いをお持ちですか?
父は残念ながら世代的にコンピューターゲームはやりませんが(何しろいま70歳なのです)、ボードゲームなら僕が子供の頃、一緒にプレイしていました。将棋やオセロ、野球盤などです。広い意味での「ゲーム」の楽しさを僕に教えてくれたのは間違いなく父です。
ピアコンには昔のテーマソングなどもピアノで演奏されていますね。若かった時にもゲーム音楽をピアノで演奏していましたか?
もちろん!インベーダーなどのアーケードゲームが流行ったのは、僕が小学校高学年の時です。休み時間には教室の片隅で足踏みオルガンを弾き、同級生にゲームの曲を演奏して聞かせて楽しんでいました。「人前で演奏して、誰かが喜んでくれる」という、今の自分の仕事の原点です。
どういう方法で選曲しましたか?
「マッピー」は実は以前から自分のライブなどで弾いていました。このアルバムの話しが持ち上がった時、ドッグイヤーからデモ音源を作って欲しいと言われました。真っ先にこのライブの音源を送ったところ、「まさにこれです!」と言われました。「スノーマン」はマキシシングル「カライジュラル」のカバー曲の候補のひとつでもありました。あとの曲はドッグイヤーの小川氏のリクエストによるものです。最後に流れる「Eight Melodies」はドッグイヤーの小川氏のリクエストによるものです。
自分なりの解釈を加えてみたいと思った事のあるゲームや、音楽等はありますか?
ゲームで言えば「ハレーズコメット(halley’s comet) 」。大好きなエマーソン、レイク&パーマーの楽曲に通ずるものがあります。ほかにはファミコン以前の初期のアーケードゲームのカバーもやってみたいですね。
ゲーム音楽以外のカバーのアイデアもたくさんあります。近々、妻と共に奄美大島や屋久島という、日本の南の島々の民謡を新しい解釈でやろうかと考えています。
最後にいろんな場面で植松さんとお仕事をされていると思います。ザナルカンドへをプレススタート用に、ファイナルファンタジーIIを今回のピアコン用にアレンジもされています。植松氏との仕事をとうしての関係はどのようなものだとお考えですか?
どの曲もピアノで弾いていてとても彼の楽曲の世界観に浸れます。とても神秘的に思えます。ドッグイヤーのイベントでは「ディスタントワールド」も弾きました。これから彼の他の曲ももっと弾いてみたいです。ちなみにプレススタートの「ザナルカンド」は僕の編曲ではありませんでしたが、冒頭に長いピアノソロがありました。満員の観客の中、オーケストラの中でたったひとりで演奏するというプレッシャーもありましたが、満足する演奏ができてホッとしてます。

Dog Ear Records Video Interview II
ドッグイヤーのホームページを拝見しましたが、ファイナルファンタジーXIVの作曲を担当なさるとのニュースが載ってましたが、それについてお聞かせください。
小川洋輝氏:: そうですね。まあ、言えない事ばがりなのですが(笑)。スクエアエニックス社の方から追って発表があると思うんですけれど。まず、久しぶりに植松氏が全曲 を担当するということ。前回植松氏が全曲を担当していたときは、まだ僕は働いていなかったのかな?まあ、プレーヤーの立場でいたのも関わらず、自分が今、 そういう仕事として関わっているという幸せ、と同時に、ずっと続いている伝統のあるタイトルなので、自分の立場なりのプレッシャーを感じながら制作に参加しています。
ファイナルファンタジーXIVを全て植松氏が作曲なさると発表があって、ファンの方もとても興奮していると思うのですが、やはり、それについての製作側のプレッシャーというものはあるのでしょうか?
そうですね。ただまあ、植松氏のプレッシャーと比べたら、僕のプレッシャーなんて「プレッシャー」と言えるものではないので。本人はいろいろな思いがある中、今も曲を作っているところです。いろんな思いを込めて作っているんじゃないかなと思いますね。
また今回のファイナルファンタジーXIVでは、ファイナルファンタジーXIのときの様に種族が出てきますけれども、個々にスタイルは似ているけれども、名前が違う。例えば「ヒューマン」が「ヒューラン」になっていますね。そういった点で、テーマソング的にもまたちょっとファイナルファンタジーXIとは違った意向で?
そうですね。本当にどういう思いで作ったかは、植松氏のみぞ知る、何ですけれど。まあ、サウンドを作ったり、録音するにあたって、やっぱり今までにない雰囲気のものをっていうところは意識をしましたし、植松氏の曲もそういうような新しい要素を含んだものだったので。まあメインのテーマの音楽たちにしろ、中の音楽たちにしろ、楽しんでいただけるんじゃないかと。新しい要素もあるんだけれど、皆さんが求めている植松氏のファイナルファンタジーの音楽の要素もたっぷりあるんじゃないかなと思います。
先ほどもお伺いした、「チェリズム」と言うアルバムなんですけれども。そちらのコンセプトはどのようなものなのでしょうか?
そもそも「チェリズム」は企画から結成したバンドなんです。結成したきっかけと言うのは、植松氏ともう一人、石渡さんという方がプロデューサーとし て入っているんですけれど、もともと植松氏がチェロの音色が好きだったというのもあり、チェロでバンドを結成したら面白いなというアイデアをずっと持って いたんですね。チェロに関わったものをいつかいつかやろうと思っていたら、ある日、石渡さんと二人でいろいろ世に出ている曲を聴いている時に、「アポカリ プティカ」というフィンランドの、メタリカとかのカバーをやっているチェロのバンドがあって。「ああ、先にやられた」というところもあって(笑)。それで アポカリプティカと同じものをやってもしょうがないので、女性でやったりという面白さ(を加えたり)だとか、あとファーストアルバムのコンセプトは、THE BLACK MAGESの曲を演奏したり、ツェッペリンとかビートルズとかそういうのを含めたロックをチェロで演奏する、というようなコンセプトで取り組みましたね。
アニメの現在放送中の「グイン・サーガ」で植松氏がサウンドトラックを担当なされているということですが、ドッグイヤーレコーズのほうではどのように関わっていらっしゃるのですか?
サウンドトラックCD自体は「ロスト・オデッセイ」とか「ブルー・ドラゴン」をリリースしたアニプレックさんからリリースされているんですけれども、アニメ用のBGM制作全般をうちで担当しました。
「グイン・サーガ」のサウンドについて、何か気遣った面というのは?
あくまで僕の立場での意見になってしまうんですが、やっぱり世界観が壮大なので、オーケストラの曲が何曲かあるんですけれど、そこと予算的な面でシンセによる打ち込みで作っていかなきゃいけない部分の音楽との間の質感の差をどううまく埋めていくか、というところですね。成田勤氏が打ち込みのア レンジをしてくれたのですが、その音源のMIX作業を、年末年始、正月からずっと時間をかけて作業しましたね。
ドッグイヤーレコーズさん今一番最新の、音源配信のみで出されている「コンガボーイ」についてぜひお聞かせください。
実は「コンガボーイ」の後の2作目で、「南の島のヤシの実物語」という着ウタで配信したものがあるんですけれど、そもそもその曲は、植松氏が中学の時に初めて作詞作曲を した楽曲で、2番までしかできていなかったそれを、50歳の今年、その続きを作って完成させた、というところが、今後発売されるであろうこのシリーズのそ もそものきっかけだったんです。第一弾として出した「コンガボーイがやってきた」というのは、植松氏が河川敷近くに住んでいるんですけれど、朝、パオちゃんの 散歩で歩くたびに、コンガを叩いている若者が毎朝いたらしいんですよ。そこからインスピレーションを膨らまして作った曲で。それは今、iTunesと、あ と日本では着ウタとして配信しているんですけれど。ゆくゆくは、今後のリリースも含めて、英語バージョンを作って配信したいなというのがあります。ぜひ、 せっかく海外に配信するのであれば、歌詞の意味合いが解るような状況でお聞かせしたいなというのがあって。
植松伸夫氏の生誕50周年記念に、一番最初に作曲した曲を出すということですね。
そうですね。50歳のうちに出すには、3月20日までには出さなきゃいけないということで(笑)。それまでにはそれが10曲入ったアルバムをリリースしたいと思っています。ついこの間、タイトルが決まったんですけれど。「植松伸夫の10ショートストーリーズ」といいます。
[Interview conducted by Miyu and Jeriaska. Images courtesy of Dog Ear Records. Photos by Jeriaska.]

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