「DESIGN WAVE」: 甲田雅人氏 インタビュー
March 21st, 2010 Posted in ゲーム甲田雅人は「デビルメイクライ」や「ワイルドアームズ」シリーズなどの音楽を手がけた作曲家だ。彼の音楽はPress Start Symphony of Gamesを始めモンスターハンター記念コンサートでも演奏されるなど、今注目すべきゲーム作曲家の一人である。彼は音楽制作スタジオ、ノイジークロークで行われた作曲家8人による会議(飲み会)にも参加し、その盛り上がりぶりがファミ通雑誌でも紹介された。
バンドスターオニオンズの一員としても活躍する甲田氏。スクウェアエニックスからは作曲家、谷岡久美、水田直志、関戸剛らと共にFF XIの音楽をアレンジし、甲田氏はライブでキーボードを担当。2005年のアレンジアルバムに続き、今年五月にリリースされたニューアルバムの「Sanctuary」はiTunesストアからも配信されている。
今回のインタビューでは、甲田氏のミュージシャンとしてのキャリアを通して、作曲、アレンジ、ライブ演奏のそれぞれの関係についてお話しいただいた。モンスターハンターやスターオニオンズでの経験談を交え、「イストリア ~ムーサ~」や「ロックマン2・ザ・パワーファイターズ」などその他のプロジェクトについても語っていただいた。是非お楽しみいただきたい。

甲田さん、今回はインタビューさせていただきありがとうございます。「モンスターハンター」の音楽が先日のコンサートで生演奏されるというのはいかがでしたか?
作曲を初めた時からオーケストラで演奏してもらうっていうことが一つの夢みたいだったのですけど、それがまずレコーディングの時に一度叶うじゃないですか。第一作目の「モンスターハンター」をレコーディングしたのは、確かビクターのスタジオだったのですけど、その時はもう本当に感動しました。そして、それを「Press Start 2006」で今度はライブでお客さんの前でやることになった時は本当に夢のようでしたね。でもあの時はでも出演しなければいけなかったので、舞台袖からだったんですよ。だから、ちゃんと客席に座って聞けたのが去年の「Press Start 2008」で。その時はなんか自分の曲じゃないみたいっていうか。
誰がオーケストレイションなさったんですか?
「モンスターハンター」の時は浜口史郎さんにやっていただきましたね。僕は「ファイナルファンタジー」の浜口さんのアレンジとか、あと「サクラ対戦」とかもすごく好きでした。
浜口さんのどんなアレンジに興味がわいたのでしょうか。
そうですね、やっぱり自分の作った原曲をすごく大事にしてくれる所でしょうか。自分では想像できなかった細かいいろいろな仕掛けみたいなものや、おいしいところをさらに引き出してくれるんですね。とくに僕が今回「モンスターハンター」で一番重視したコード感とかをすごく大事にしてくれた印象があります。あと、モンスターハンターは、キーが、E Flatなんですけど、実は演奏者にとってはすごくやりにくいキーなんですね。半音下げればすごくらくになるんですけど、やっぱりそのDの色 と、E Flatの色が全く違うんですよ。Dだと原色カラーで、 E Flatだとモスグリーンとかそういうイメージが僕のなかではあって。浜口さんはそこを大事にしてくれて、E Flatのままアレンジしてくれたみたいですね。
昔から音によって「色」を表現する事に興味があったわけですね。
そうですね。いつからついたかわかりませんけど、やっぱりそのシャープ系のキーとフラット系のキーはちがったりとか意識しますね。
デザインウェーブの為に今後はどういうお仕事を担当していきたいですか?
自分に向いているものって自分ではよくわからないですけど、好きなのは、楽しいのは演奏ですね、やっぱり。バンドとかでライブで演奏したりすることですね。
ライブ経験などはありますか?
Star Onionsもそうですけど、学生のときはずっとバンドで演奏してきました。
甲田さんの一番印象に残っている演奏の経験?
一番印象に残っているのは海外で、Santa Monicaで演奏した時ですね。やっぱり日本とはちがう反応があるじゃないですか。ノリというか
盛り上がり方が。日本ではわりと静かに聞いているんですよね。そんなに曲調も「The Black Mages」とは違って、静かでフュージョンだったりとかイージーリスニングに近いものなのにアメリカに行くとやっぱりそういうのでも大きな反応をしてくれるんですよ。やっぱり全然日本とは違いますね。そうやって盛り上がってくれるからこっちもうれしいですね。
これからも海外で演奏したいですか?
またいろいろなところに行ってみたいですね。楽しいです。
デザインウェーブではゲームミュージック以外の音楽も制作されますか?
ゲームだけとは絞ってないんですけど、今現段階ではゲームを一番の軸としてやっていきたいですね。杉森は「逆転裁判」の作曲家なんですけど、CAPCOM時代は後輩でしたので、いろいろ教えたりとかしてましたね。
時々、音楽をつくるのは苦労する事はありますか?
そうですね、まあ続編は続編で難しいところがあるんですけど、やっぱり新規タイトルを手がける時ですね。この作品にはどういう曲調があうのかっていうのを自分で考えながら本当にいろいろ試行錯誤しますよね。「モンスターハンター」もこの曲調に落ち着くまではいろいろ大変でしたね。オーケストラじゃなくて民族音楽をもっと、とか。それと同時にゲーム自体も日々仕上がっていくじゃないですか。それを見て、「あっ、なんか自分が作っているものと違う、もっと壮大だ!」と気づいたりしましたね。最初はこう言ったら悪いんですけど、ちょっとB級的なノリがあるゲームだと思っていたんですよ。始めはモーションがちょっと漫画みたいにおもしろかったりと、そういう要素があるのかなぁって思ってたんです。男の子が楽しんで遊べるような。でも実際はもっとしっかりとした大きな世界観があったんですね。だから、ちゃんとした音楽、そう言ったら語弊がありますが、つまり映画にも匹敵するくらい大きなテーマ曲を作らなければ、とそのときに思ったんです。
始めはモーションがちょっと漫画みたいにおもしろかったりと、そういう要素があるのかなぁって思ってたんです。でも実際はもっとしっかりとした大きな世界観があったんですね。だから、ちゃんとした音楽、そう言ったら語弊がありますが、つまり映画にも匹敵するくらい大きなテーマ曲を作らなければ、とそのときに思ったんです。
映画ジャンルからの好きな作曲家は?
John Williamsですね。アレンジとかもかなり勉強させてもらっています。 John Williamsによる「スターウォーズ」や「ジョーズ」の曲を聴いた時の衝撃はすごかったですね。彼のすべて作品が出るごとに興奮しました。初めて映画館で見た洋画は「未知との遭遇」(Close Encounters)なんです。
UFOが飛んできて、通信して。あの最後のセクション覚えていますか。シンプルなノートからどんどんふくらんでいって UFOに乗って飛び去るまでのあのセクションとかもう完璧ですよね。ああいうのを表現できる、自分でもそういう風になりたいと思っていました。あとあのセクションのすごいのは、UFOのように未来的なシーンなのにシンセとかそういうものを簡単に使わず、全部オーケストラでやっているっていうところなんです。普通はシンセとかでやったら効果的だし、安易に考えたらやってしまいそうなのですけど、あれはたぶん意識してオーケストラでやったんじゃないか、と勝手に想像しています。

スターオニオンズに参加したきっかけをお話しください。
きっかけは作曲の水田君がCAPCOMの94年入社で同期であり、特に仲良くしていたんですね。その後彼はスクウェアエニックスに移ったんですけど、もちゃんと交流はつづけていたので、それがあったからですね。あと彼とはコード進行とか好きな音楽とかで近いところがあって、それで話をもらえたんじゃないかなぁと思います。
特に最後の二曲、10番と11番の2曲は水田君がもともとアレンジしたものがライブで先に演奏されていまして、その時のアレンジをもとにまた僕が ちょっと手を加えたものなんです。だからこの二曲に関しては水田君のカラーがでていると思います。ベースも彼に弾いてもらい、録音しているんですね。
谷岡さんがクリスタルクロニカルで手がけたエスニックミュージックについて感想をお聞かせください。
なんて表現したらいいんでしょうか。。澄んだ音を出してきれいで素直な音楽でありながら、やっぱり彼女のテイストがしっかりと出ていて僕には作れないなぁっていうところがありますね。例えば今回のこのアルバムでもグスタベルグが一曲はいっていますけど、やっぱり僕には思い付かないなっていう部分があります。
あと前のアルバムの「アウェイクニング」とか人気がある曲ですけどアレンジは僕が担当したんですけど、 曲の構成力とかがあってとてもおもしろいですよね。始まりから終わりまでにいろいろなことがおこるじゃないですか。そういうところがおもしろいし、モード的な音階の使い方をすごく知っているので民族色を感じることができるでしょうね。
ロバハウスさんと一緒にお仕事をされた事はありますか?
ロバハウスは仕事で僕は直接関わったことはないんですけど、大好きです。僕は国立音楽大学を出てるんですけど、大学が立川市にあるんですね。ロバハウスも同じ立川市の玉川上水という駅のすぐそばにあるので、昔からよく知っていましたし、あそこでライブがあったら見に行ったりもしました。
ディスタントワールドの音楽をアレンジされていかがでしたか?
こちらは植松伸夫さんの曲ですね。植松さんといったら僕がゲーム音楽を始めようとしたきっかけというか、一番影響があった人ですね。ファイナルファンタジーIV とか。ファミコン時代の音楽って僕にとっては特殊なものに聞こえたので、自分がまさかそういうことをやるとは思っていなかったんですね。スーパーファミコンになると音色が変わって、オーケストラのような音とかで表現できるようになったじゃないですか。そういったものを聞いた時に「あ、おもしろそう!これだったらすごいやってみたい!」と思いまして。丁度その頃はバンドとか始めていてキーボード担当していたので打ち込みを覚えてやっていたのもあって、ゲームミュージックをやってみたいと感じていました。
そのファイナルファンタジーIVの中で一番印象に残っている場面はありますか?
あの赤い翼の最初のシーンから、確か飛行船のシーンですよね。もう最初の一曲目からもう違う!と思いました。あとは、「愛のテーマ」とかいい曲ですよね。
ファイナルファンタジーVIにオペラとかありましたよね。あれとかもすごく好きでしたね。ケフカのテーマがとても好きで、あれが最後のバトルシーンでつかわれていましたよね。(二人で歌いだす。)あれは上にどんどん上がっていくにつれてアレンジがどんどん変わっていくじゃないですか。どんどん荘厳な音楽にかわっていく。その上バトルの曲なのに途中でメジャーコードになったりするんですね。ああいうところとかすごいかっこいいなぁと思い ましたね。こんなことやってもいいんだ、と。あの曲には影響をうけましたね。
ディスタントワールドのアレンジについてお話しください。
このディスタントワールドのアレンジの話をいただいた時にすぐ頭の中でその音が鳴ったので、何の迷いもありませんでした。もとのオーケストラとソプラノ歌手を使ったアレンジは実はコードはすごくジャジーなんですよね。それはすごく原曲聞いているときから感じたので、そこ の部分をもっと引き出して、みんなにもわかりやすくしてようと思って作りました。どうしてもオーケストラの音だとストリングスとかすごくきれいにハモっていて、あまりにきれいに馴染みすぎているので、聞いている人にはジャズの要素は聞こえないじゃないですか。
だからそれをカルテットとかにしてビブラホーンとかも入れたらうまく表現できるし、誰が聞いてもジャジーだなぁとかんじるだろうと思って。だから実は原曲からコード自体は変えていないんですよ。原曲に忠実に楽器を変えただけであれだけのテイストが出せる。あと、面白いことにあの原曲のオーケストレイションは実は江口さんなんですよ。植松さん作曲、水田君アレンジそしてオーケストレイションは江口さんがなさった、ていうのが原曲で。それを今回僕がさらにアレンジしたんですね。
Star Onions やMonster Hunter のアルバムに加え、甲田さんは昨年「イストリア ~ムーサ~」というプロジェクトにも参加されております。こちらは各トラックがギリシャ神話の神々の名前からつけ られてます。このプロジェクトが開始したいきさつをお話しください。また、甲田さんの担当されたピアノ曲2曲はどのようなコンセプトで作曲されまし たか?
一度、ゲームミュージックをやっている人たちが集まって、みんなで食事をするような会があったんですね。その時に伊藤賢治さんと、広田さんと志方さんがいらっしゃっていて、その時に初めてお話ししたのがきっかけで、この話をいただきました。志方さんのイメージはオリジナルアルバムとかを聞いたことがあったので、このイストリアのコンセプトを聞いたときには、まさに志方さんのイメージにぴったりな企画だなぁと思いました。
だからそれぞれの女神のイメージをもちろん大事にしましたけど、まずはその志方さんのキャラクターのイメージを保とうしました。僕が担当したのは歴史の女神と悲劇の女神だったんですけど、志方さんのイメージを大事にした上で、女神のキャラクターの要素を加えた感じですね。
このピアノのスタイルはどう思いますか。
悲劇の方がピアノなんですよね。そうですね、アレンジのスタイルという面では、あの曲は情熱的に弾くというよりは淡々とクールにあまり感情を出さない感じで弾いて、わざと音と音の隙間を作りました。その隙間の音が鳴っていない部分を味わってほしいなぁと思い、あまり音をいれないアレンジにしました。
ロックマン2・ザ・パワーファイターズでは三曲ほど作曲されてますよね?
はい、ステージ曲としては3曲アレンジしています。
その曲はどうやって決まりましたか?
僕は先輩たちが先にこれをやりたい、あれをやりたい、と取った後に余ったものをもらったおぼえがあります。でも、もともと好きだったものが残ったので。
ダイブマンの曲でどんなところがおもしろく感じますか。
ダイブマンはコード進行を変え、そして自分なりにリハーモナイズする所にこだわりました。ストーンマンは16ビートの切れのいいリズムとか、ちょっとラテンぽいリズムとかを加えたりしました。リズムで面白いことをしようというのがありましたね。ファラオマンは最初のフレーズでダウンビートを使いながら、サックスでファラオのイメージを出したりしました。
他のミュージシャンとコラボする経験はいかがでしたか?
まだ入社2年か3年目ぐらいで、周りがみんな経験豊富な先輩たちだったので、仕事の仕方を見たりしながら他の人がどんなアレンジするのかっていうのを勉強させてもらいました。ほぼ全員の先輩と関わって作らせてもらったので、いろんなそれぞれのスタイルとか作り方とかを見ることができ、そういう面でいい経験になりましたね。
作曲家としてバンドの経験は大切なものなのでしょうか?
作曲というよりはアレンジする上でやっぱり楽器についての知識ですよね。ギターをいじったことがあるとか、ドラムをどういう風に叩いているのかとかバンドをやっているとわかりますね。
今ゲームミュージシャンになりたい学生さんの皆さんにはバンド演奏の経験をお勧めになりますか?
そうですね、今はもう作曲してアレンジまで一人でやることが当たり前になっているじゃないですか。特にゲームミュージックに関してはその後の打ち込みも自分でやって、ミキシングも自分でやるのがあたり前になっている。一つ一つの楽器の特性とかを知っているとリアルなものが作れますよね。打ち込みにしても。ギターでこういうコードは弾けない、とか。それぞれの楽器ならではのフレーズがありますよね。ギターだったら5度で重ねたりできますけど、他の楽器ではあまりそういうことはしませんね。
[Interview conducted by Jeriaska. Translation by Takahiro Yamamoto. The Monster Hunter 3rd Anniversary Commemorative Best Track album can be imported from Amazon.co.jp. Images courtesy of Square Enix and Capcom.]

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