「5pb Records」× 「DG-10」: プロデューサーインタビュー
May 12th, 2010 Posted in ゲーム2008年7月にKORG DS-10ソフトウェアがリリースされて以来、世界のニンテンドーDSを所有する人すべてに、エレクトリックミュージックの作曲とライブパフォーマンスに必要なツールが提供できたと言って良いだろう。それは強い影響力を持つ楽器会社「KORG」によって開発されているだけでなく、THE BLACK MAGESのメンバーである岡宮道生氏、「クロノトリガー」でおなじみの光田康典氏、そして「リッジレーサー」の佐野信義が開発のキーとなるアイデアを提供している。
そして今、新しいフィーチャーが含まれたDSのカートリッジの拡大バージョン、KORG DS-10 PLUSが北米でリリースされようとしている。そのリリースに合わせて行われた今回のインタビューの中で、DS-10のキーメンバー2人が日本での彼らのユニークなステータスの裏側について語ってくれた。『5pb.Records』のプロデューサーである中村方俊氏がDG-10のアルバムの出版プロセスについて解説。KORG DS-10を使って制作された音楽に合わせ、コスチュームに身をまとい演奏するヴォーカリストが3人集まったこのグループDG-10とは。
インタビューにはDG-10のプロデューサーであり、アルバムの作曲家である佐野電磁氏も参加。面白おかしいコンファレンスでのキーノートスピーチや皮肉まじりのミュージックビデオ。佐野氏はミュージシャンとして日本でのソフトウェアの受け入れ方というものを定義づけてきた。東京にあるリキッドルームでのDG-10のパフォーマンスからの映像はハイコンセプトな彼らの精密に仕上げられたスタイルを強調している。

中村方俊さん
中村さん、今日はKORG DS—10のソフトウェアの受容を定義づけるということにおいて『5pb.Records』がどのような役割を果たしたかについてこのインタビューの中でお話していただけるということでありがとうございます。今までにDG—10のアルバムを3枚リリースされてきたわけですが、このグループの魅力というのは何だと思われますか。
★シンセサイザーの擬人化としての魅力
ファンタジーに考えると「もしシンセサイザーが女の子だったら、そのシンセサイザーはどんな音を奏でるのだ ろう?」という妄想をすると、DG-10は楽しいかもしれませんね。DG-10のメンバー3人は、既にプロの声優として活躍中でして、”声”そのものが DG-10としての楽器の役割を果たしています。3人の声はそれぞれ本当に魅力的で個性的なのですが、音源制作で使われているKORG DS-10との相性も良く、3人の声の融合も非常にマッチし、DG-10としての魅力が全面に出ていると感じています。
★KORG DS-10とのコラボレーションとの魅力
リキッドルームでのイベントのライブ映像を観ていただくと分かりますが、最先端のテクノロジーであるKORG DS-10の演奏に合わせてアナログなボーカルで歌っている姿は、今までにない新鮮さを感じていただけると思います。KORG DS-10をはじめ、シンセサイザーを手に入れたときの喜びや、そのシンセサイザーで曲を作って歌を入れてみたいとか、そんな皆さんの夢を実現化したよう な企画も魅力のひとつです。
★DG-10の楽曲についての魅力
CDで歌っている選曲については、KORG DS-10とDG-10のメンバーのボイスが最大限発揮できるような楽曲を佐野電磁氏と一緒に決めています。そして何よりも全曲KORG DS-10の使い手のプロフェッショナルが、楽曲を作っている点が魅力ですね。

80 年代にシンセサイザーがもてはやされた時代の流行歌である「ハイスクールララバイ」や「風の谷のナウシカ」は、YMOでおなじみの細野晴臣氏作曲のカバー であり、シンセサイザーファンもそうでない人も耳になじみがあるような楽曲として選曲しました。「ハイスクールララバイ」については、KORG DS-10で作られたYMOの「RYDEEN」をネットで公開し話題となり、KORG DS-10 PLUS Limited Editionでも収録となったnatto21氏に制作していただきました。DG-10のボイスとともに、原曲とKORG DS-10で作られた音源の聴き比べにも注目して欲しいです。
佐野電磁氏が作曲されている「DG-10」や「VCO-VCF-VCA」 「ワタクシタチハ」は最新のクラブミュージックにKraftwerkのエッセンスを加えたようなコンセプトで作曲していただいています。これらの楽曲の共 通点で驚くべき点は、歌収録にあります。歌収録の段階ではほぼ楽曲は出来ていなく、あらかじめ用意した文字要素をDG-10のメンバーにスタジオで読んで いただき、その後、佐野電磁氏が作った楽曲にあわせてDG-10の音声素材に音程をつけて楽曲制作を行っています。「VCO-VCF-VCA」について は、koishistyle氏がリミックスを行ったバージョン「VCO-VCF-VCA(koishistyle remix)」がありますが、音声素材を全く違う音程に変えているので、ぜひ佐野電磁氏のバージョンとの聴き比べをして欲しいですね。
「シ ンセサイザーに恋して」はムーンライダーズの岡田徹さんをゲストに迎えて作られた楽曲で、テクノポップの原点のような楽曲を作っていただきました。 「GHOSTBUSTERS」は80年代の雰囲気とアナログシンセサイザーの融合、そしてDG-10のボーカルそのものの魅力が楽しくミックスマッチした 楽曲になったのではないかと思っています。【夜間】(yakan)氏によるKORG DS-10で再現された「GHOSTBUSTERS」の完成度と、DG-10のハイテンションで可愛いボイスをぜひお聴き下さい。その他には、ディズニー のエレクトリカルパレードでかかるような音色が魅力の「技ありっ!(VCF-VCA ver.)」や、次世代の音楽ファンに聴いて頂きたいと思って収録した「アメフリカエル」など、作曲家や時代背景など調べれば調べるほどDG-10の魅力 は出てくると思います。
DG-10メンバーのファンはもちろんの事、KORG DS-10ユーザーや「YMO」や「Kraftwerk」「DENKI GROOVE」などで過ごしてきた皆さんや、次世代の音楽ファンにぜひDG-10を楽しんでいただきたいと考えています。
DG-10 Live at Liquid Room: The DS-10 Trio
エクストラ・ゲーム・ミュージック・イベントからDG—10のライブまで、『5pb.Records』は東京近辺を中心にライブパフォーマンスを企画していますよね。それが5pbのメインフォーカスとなっている理由は何ですか。それからそれらのイベントを企画する上で何が一番大変ですか。
ライブ会場のキャパシティや集客を考えて、交通網が発達している東京をメインフォーカスにしています。ただ、海外でもぜひイベントを開催したいので、ぜひ協力者が欲しいですね。
イベントの企画は「いかにお客さんに楽しんでいただくか」が重要なので、お客さんの需要に合った内容を考えることが最も大変です。あとは物理的な問題で言えば、ブッキングなどのやり取りは本当に大変です(笑)。
大学時代は薬剤師という全く違う系統のお仕事に就かれる予定だったと以前おっしゃっておりましたが、どのようなきっかけでビデオゲーム音楽のアルバムを出版するお仕事に就かれたのですか。
私自身が小学校のころからゲームミュージックが好きで、ゲームミュージックのCDだけでも数千枚以上は家にあります。好きになったきっかけの音楽は「レッ キングクルー」とか「ドラゴンクエスト」「沙羅曼蛇」などでしょうか。私は大学在学中にゲームミュージックのファンサイトを作っていたり、2000年には All About Japanのゲームミュージックガイドを担当していたり、NINTENDO DREAMという雑誌でゲームミュージック記事の連載も担当してました。
そんな中、サイトロンというゲームミュージックの音楽CDを主にリリース する会社でもアルバイトをしておりまして、主にLEGENDシリーズと呼ばれるゲームミュージックのCDや「ファミコン 20TH アニバーサリー」CDの収録などを担当していました。その後サイトロンが無くなったのですが、サイトロンのメンバーが5pb.を立ち上げ、大学卒業後にお 誘いを受けて入社させていただきました。
現在、私が5pb.で担当しているのは、DG-10以外に「世界樹の迷宮」シリーズや「オーディンスフィ ア」「ファミソン8BIT☆アイドルマスター」など主にゲームミュージックCDの制作で、その他にはイベント「EXTRA - HYPER GAME MUSIC EVENT」の主宰を行っています。
クラブミュージックを聴く事が出来る場所として東京にはクラブがたくさんありますよね。 『5pb.Records』はその業界から才能のある人材をビデオゲーム業界に送り込んできました。中村さんはどのようなきっかけで『5pb.』のラ イブイベントでQuadさんと仕事をしたり、様々なアルバムでミキサーとして参加するようになられたのですか。
私はクラブイベントがとても好きで、自分でもクラブでDJを行ったりしていました。quad氏は、自分がよく行くクラブイベントでDJとして参加 していて、DJスタイルが非常に素晴らしかったので、そこで声をかけたのがきっかけです。DG-10のプロデューサーの佐野電磁氏と始めてお会いしたの は、2002年に私がAll About Japanのゲームミュージックガイドを担当していたとき主宰したGAME MUSIC CLUB EVENT”LEGEND”です。こういったきっかけから現在につながっています。
『世界樹の迷宮』は日本国外でも増々人気を上げて来ておりますが、海外では『5pb.Records』のサウンドトラックや古代祐三さんによって作曲されたアレンジアルバムを輸入して聴いている熱狂的なファンもたくさんおります。お話し出来る限りで結構ですので、『5pb.』が今制作に当たっているゲームシリーズのアルバムなどがありましたら教えていただけますか。
2月24日発売「ユグドラ・ユニゾン 〜聖剣武勇伝〜 Audio Collection 」
3月25日発売「クラシックダンジョン 〜扶翼の魔装陣〜 オリジナルサウンドトラック」
4月 7日発売「世界樹の迷宮III 星海の来訪者」オリジナル・サウンドトラック
5月12日発売「世界樹の迷宮III 星海の来訪者」スーパー・アレンジ・バージョン
などでしょうか。ただ、まだまだ未公開のCDをたくさん制作中ですので今後とも宜しくお願いいたします!
DG-10 Live at Liquid Room: Golden Synthesizer
佐野信義さん
佐野さん、今日はインタビューに応じていただきありがとうございます。佐野さんと最後にお話した時はトリオ・ザ・DS-10がEXTRA2008 でデビューをされた時でした。どのようないきさつでDSのソフトをライブパフォーマンスに使用するDG-10の誕生につながったのか教えていただけますか。
お久しぶりです。まさかEXTRA2008の時にはトリオ・ザ・DS-10がコペンハーゲンでライブをするまでになるとは思っていませんでした。DG-10は、所属レーベルの担当プロデューサーである5pb.の中村氏から提案があったのがきっかけです。DS-10でライブパフォーマンスを行う人のほとんどがインストものだったため、ちょうど歌モノを自分で手がけてみたいと考えてたので、すぐに合意し、制作に入りました。
Twitterで「GOLDEN SYNTHESIZER!」がご自分のマスターピースとおっしゃっておりましたが、DG-10のアルバムシリーズの中で何が一番「有意義であったな」と思われますか。
DG-10の3人、作曲者、その他関係者の誰もがとことん楽しんで音楽を作っている様子が、どの楽曲からも特に強く感じられる点です。
DS-10のブログを読むとDS-10 Dominatorの様なソフトウェアを主に使用しているミュージシャンにとても感心をお持ちのようですが、DS-10の制作当初に将来このような反響が出ると予測されておりましたか。
ここまで多くの反響が出るとは予想していませんでした。本当に嬉しいですし、DS-10を楽しんで頂いている方々には出来る限り協力していきたいと考えています。また、今後もこれ以上に多くの方々に広がっていく製品が作りたいです。
KORG DS-10 PLUSを制作する際にどのフィーチャーを付け加える事が重要だったと思われますか。それとその理由を教えて下さい。
弊社の担当プログラマから「DSiならDS-10が2台分実装出来るかもしれない」という話を聞き、その新しいDS-10でぜひ遊んでみたい!と思ったのが開発に至った一番の理由です。その他、SONGモード時にほとんどの操作を可能にしたことや、MUTEのプログラムの実現は、ユーザーや開発スタッフの意見を踏まえ、かつ、スムーズに実現出来るかを検討した結果です。
佐野さんは今でもcaviaのゲームプロジェクトのオーディオデザインを監督されておりますか。それともKORG DS-10の方にメインフォーカスをおいておられますか。
現在、通常のビデオゲームのオーディオデザイン業務は、実際にそれらを担当するサウンドスタッフのマネージメントのみに徹しています。DS-10の開発ディレクションとは全く異なる仕事なので、フォーカスをどちらに効かせるということでなく、完全に並行して行っています。
スティーブ・ジョブズのパロディーや、DG-10の病院のミュージックビデオなど、佐野さんのビデオプロジェクトは日本では最も楽しくユーモラスなプロモーショナルビデオとして脚光を浴びておりますが、DS-10をプロモートするに当たってユーモアという要素は重要な役目を果たしているのでしょうか。印象深いこの二つのビデオを制作された時にまつわるおもしろいエピソードなどがあれば教えていただけますか。
プロモーションに限らず、そしてDS-10に限らず、何か作る上では必ずユーモアを織り込みたいと考えています。そもそもnintendo DSでシンセサイザーを実現するという企画自体が、ある意味「ユーモラス」だと思いません?
「ジョブス」のスクリプトを丸暗記するのは、テスト前の学生のようでした。また、DG-10のプロモーションビデオの舞台である産婦人科は、静岡にある病院まで出張して撮影を行ったので、どちらも楽しい撮影でした。
このKORG DS-10が今では世界で大人気となったわけですが、将来日本以外で佐野さんと他のメンバーにお目にかかれる機会はありますでしょうか。
もちろんです。というか、日本以外の方、ぜひご連絡ください。DS-10を持ってどこにでも行きます。ただ・・・もともと予算が大変少ないプロジェクトだったので、すでに宣伝費が全くありません。飛行機代と宿泊費を出して頂ければ必ず!
DG-10 Live at Liquid Room: High School Lullaby
[This article is available in French on Gameblog. DG-10 albums can be imported from Amazon.co.jp. Interview, photo and video by Jeriaska. Translation by Kaoru Bertrand. Images are courtesy of DG-10 Official web and KORG DS-10. Copyright © 2010 5pb.Inc. © Sanodg All Rights Reserved]




